いきなりやる気が出たり、楽しくなったり、悲しくなったり、寂しくなったりするのは人間だから。
そう自分に言い聞かせて気持ちを保とうとするんだけど、悲しいのや寂しいのが行き過ぎてしまうと、周りはこれを乗り越えているんだろうと考えて、乗り越えられそうにない自分に絶望してしまう。
荒れる気分の波は、自分でも抑えられない。
「」
すれ違ってからすぐ、久々知君に呼び止められた。
振り向くと彼は数歩分をすたすたと戻ってくる。
「どうかした?」
これは私じゃない。呼び止めた彼が言った。
「何が?」
言っている意味が分からない。首を傾げると久々知君も同じように首を傾けた。
「何か元気ないなって、思った」
「え、そうかな」
顔に出ていただろうか。思わず頬に手を当てる。
今の気分はどん底一歩手前。いつでも泣きだせそう。実際には涙なんて出ないんだけど。
どうして気付くの。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。ちょっと風邪気味だったから」
反射的に笑ってしまう。
あーあ、ここできつい、辛いって言えたらいいのに。
「本当に?」
ジッと黒い瞳に見つめられる。あまりにもまっすぐで、つい目をそらす。
「うん、ごめんね」
「それならいいんだけど」
ふっと、久々知君が薄く笑った。
「が元気ないと俺がさみしいよ」
「え、あ、うん」
うん、ってなんだよ。うんって。
そして今の言葉の意味は。
真意を問いたかったけど、久々知君は踵を返して何事もなかったように歩いて行ってしまった。
残された私はどうすればいいの。
波、急上昇。
2012/8/25
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