ドリーム小説
桃色の集団の中に頭一つ飛び出している、好きな女の子の顔。
いつも、女子の壁に取り囲まれている。
たぶん彼女は孫兵が自然と動物に好かれるように女子に好かれているんじゃないだろうか。
目を引くんだよな。
何とか近寄りたくて、くの一の機嫌が悪くなることを承知で話しかけた。
「はあ、はモテモテだな」
「何、竹谷羨ましいの?」
「あんたにはあげないわよ」
馬鹿にするような言い方に、少しカチンとする。
しかしそれは振り向いたと予想以上に顔が近くてドキリとして消えてしまった。
が手に持っている包みに目が行く。
が女子に囲まれている場面も、物をもらう場面も、逆に相手を助けている場面もよく見る。
女子だったらもっと仲良くなれるのに。今前にいるくの一たちに少し妬いてしまう。
「他にももらってんの?」
「へぁ?」
・・・ちょっと、今の可愛かった。こう、いつもしっかりしている奴の油断した感じだ。
「お菓子、他にももらった?」
「うん、なんかもらう。甘いもの好きだから嬉しい」
二コリと笑うがすっげ可愛くて、思わず俺も笑いそうになるのを耐える。
しかしこの顔をさせているのは俺じゃない。
特別仲良くもない男が理由もなく女の子に物を渡せるはずもなく、目の前のくの一を羨ましがる他ない。俺も、こんな顔させてみたい。
「ずりぃ」
ポロッと言葉が漏れた。小さな声だったが、が首を傾げたから聞こえたのだろう。
「え?竹谷君食べたいの?よかったら一緒に食べる?」
・・・そう取るか。
「あ、いや」
俺が訂正しようとする前にくの一たちがの袖を引いて言葉をふさがれた。
笑顔に受け答えするが良い奴だってことを改めて実感する。
「あ、じゃあさ」
再びと目が合う。何か提案らしい。
しかしすぐにの顔が困った顔に変わった。
「いや、何でもない」
何でもないことないだろう。
それでも追求できない立場の自分が情けない。
籤に並んで自分の番を待つ。
箱に手を入れて願う。
どうか、と同じ番号でありますように。
ひいた紙を開くと九番だった。
・・・は何番だろう。
見渡せばは簡単に見つかる。それとなく気づかれない具合に側に寄った。
俺の行動ってちょっと怪しい奴。
「、何番だった?」
「十五。は?」
・・・十五か〜。そう上手くは運ばないか。九と書いてある紙が憎らしくて乱暴に折り曲げた。
「お〜、八左ヱ門。お前何番?」
手を振って三郎と雷蔵が近寄ってきた。
「九番。三郎は?」
「十五番」
・・・十五。さっき確かに聞いた、十五。
「・・・三郎、それ交換してくれ」
「は?」
「番号、交換してくれ」
頼む、と前で手を合わせる。驚いていいた三郎の目がだんだん下がる。
「ほ〜、これ相手は誰なんだろうな〜」
ニヤニヤと笑う三郎。当然全てお見通しのこと。
「頼む。ほんと、お願いします!!」
「そうか〜、相手はかぁ。どうしようかな」
そう言う三郎に俺は頼むしかないのだ。
周りにくの一のいない数少ないチャンス!!
「三郎、意地悪するなよ。別に誰となりたいとかないんだろ?」
「分かったよ。ほら」
雷蔵の一声。三郎は笑うのをやめて紙を俺に差し出した。そこにはちゃんと十五の文字。
「恩にきる!!」
「なんか奢れよ」
「ああ」
少し皺のできた俺の紙を三郎に渡した。
それをしっかり手に握りしめて、俺はに近づいた。
「、何番だった?」
が少し口ごもった。言いたくないとか?しかしその口はすぐに開かれる。
言われる数字は15。
「九番だよ」
・・・は?あれ、俺もしかして聞き間違えた?
「え、っと、九番?」
「え、うん」
確かめたが肯定される。
さっき十五って言ってなかったか?俺間違えた?くそ〜、さっきので合ってたんじゃないか。三郎に返してもらわないと!!
「ちょっと待ってて」
人ごみから三郎を探す。茶色の頭が見えて捕まえる。
「三郎!!」
「・・・雷蔵です」
・・・ごめんなさい。
「三郎知らないか?緊急事態、緊急事態!」
「よく分からないけど、三郎なら前の方だよ」
「ありがとう」
前を見て、同じように茶色の頭を見つける。
「三郎!!」
「ん?どうした」
「紙、紙。なんか番号違ってた。交換交換」
「焦り過ぎだろ。なんだ?九番だった?」
言葉にならず端的に頷く。
「ほら、紙」
先ほどのように紙が差し出された。確かに九番。
「よっし!!じゃあな。あ、奢る話はなしで」
「げっ」
もともと俺のだし。
待っているのところへ戻る。
証拠のように、籤を差し出した。
「悪い。待たせた。俺も九番」
それを見て、がポカンとする。
・・・もしかして嫌だったか?