I'm looking for you







「I want to love. But I don’t need a boyfriend. I would like to carry out love once in a lifetime.」

私は恋がしたい。でも恋人はいらない。一生で一度の恋がしたい。

英語の課題で「今欲しいもの」を英文にして発表する、と言う授業での一コマ。

素直に描いたら先生もクラスメイトもポカン。最終的に笑われた。

どうして笑われるのか分からない。

私はかっこつけたわけでも、ウケを狙ったわけでもない。

私は、私が好きになれる人に出会いたいだけ。

本当の恋がしたいだけ。











 一学期目の終業式、放課後。

誰もいなくなった教室で友人を待つ。

パカパカと携帯を開け閉めするが連絡なし、足音もしない。


『終業式の日、放課後に音楽室近くの踊り場にある大きな鏡に映ると、願い事を三つ叶えてくれるんだって』


学校の七不思議、と楽しそうに紹介してくれた友人は確かめたくて仕方がないらしく、私まで付き合わされることになった。

けれど今、友人は現れない。帰ってしまったんじゃないか。

『待ってるんだけど』

メールにそう打って送信した。

パタパタと廊下からスリッパの音がする。

、まだ帰ってなかったのか。何してんだ」

「えっと、待ち合わせを」

現れたのは体育の担当教員。少し溜息をつきそうな顔をすると、足を進行方向に向けた。

「早く帰れよ。もう下校時刻だぞ」

「はい」

またパタパタと歩いていく。

うん、帰ろう。来ないあいつが悪いんだし。





「・・・願い事」

下りる階段を上れば、鏡がある。

所詮噂だし、七不思議だし。

「信じる方が馬鹿」



そう思うのに、どうしてか私の足は一段上っていた。







濁った金色の額に縁取られた鏡は私が三人並んでも入ってしまうほど大きい。

それの真ん中に立つが、普通の鏡とどこも変わらない。



願い事か。



「本当の恋がしたい」



ただ鏡に映った私が同じように立っているだけだ。

当たり前。

信じる方が馬鹿。



『でもね、他の人が願いをかなえてもらってる途中だとダメなんだって。まじめだよね』



きっと、叶わなかった人と叶った人がいたんだろう。

まあ、一応お願いしたから、ちょっと心に留めておくのもいい。



帰ろうと思った時だった。

眩しくて反射的に目を細める。

そしてぼんやりと映し出される、私ではない何か。

真っ青な草原。雲のない空。

どうやっても校内で映し出されるものじゃない。

「なにこれ」

手を伸ばす。

鏡に触れる。

しかし手は鏡を通りに抜けた。

そして、何かに手首を引かれる。

「いっ」

足がもつれて、顔から鏡に突っ込む。

痛みを予想して目を瞑る。

しかしぶつかることはなく、私は草の上に突っ伏した。



屋内にいた私の頭上にはさんさんと輝く太陽があった。






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