ドリーム小説
私はという名前で成績優秀、実技抜群、気の強い美人と同じ組に属する平凡女子のという。
性格?見ての通りやさぐれてますけど何か?
そんな心の不健康児の私には実に健康的な習慣がある。
朝早く起きて、身支度を整え、鏡でおかしくないか確認。そこから駆け足で食堂へ。中に入らず入り口付近で待機。
そして目的の相手を見つけたなら、自分の中で一番良い笑顔で明るい声を出す。
「おはよう、勘右衛門」
私の習慣は毎朝尾浜勘右衛門にあいさつすること。
もちろん、彼は私の想い人。
「本当、よくやるわ、あんた」
私の習慣を知っている同室の友人が言った。彼女は私の習慣に感心するが、少し憐れんだようでもある。
「挨拶しただけでおびえられてるって言うのに」
そう、私は勘右衛門に怖がられている。
理由は簡単。一年の時にいじめ過ぎたから。だって会った瞬間に一目ぼれだったのよ!!
「よろしく」って言って笑った顔に胸キュンだったの。
けど、私は幼かった。どうにか関係を持ちたいと思った結果、イジメにイジメにイジメ抜いた。だって嫌がる顔も可愛かったの。
今では私を見ると必ず半歩下がるっていう条件反射までついた。話しかければ必ずドモる。
「あ〜あ、流石にやりすぎたかなぁ」
幼いころの自分を思い浮かべて少し後悔。もう少し抑えていたら今でも笑顔で挨拶を返してくれたりしただろうか。
あわよくばお話ししたり、遊びに行ったり、もしかして彼女の座も遠くなかったかも・・・。
「異常に力入ってたもんね、仕掛けに」
落とし穴は当たり前。吊るしたり、こかしたり、突っ込んだり、おびえさせたり。
どれをとっても秀逸。ああ、流石私。
「なに酔ってんのよ。あんた今の現状分かってる?」
「うっ」
ビシッと指を向けられた。
「あんたはこのくの一教室の中で尾浜勘右衛門にとってはドベなの、最下位なの。
他の誰ともあったとしても、あんただけはありえない、そういう位置づけなのよ、わかってんの?」
彼女の言うことは間違いではない。というか正解だ。尾浜勘右衛門にビビられるなんて木下先生か、伝子さんか、私ぐらいだ。
くの一教室で唯一望みのない女。
それが尾浜勘右衛門にとって私なのだ。
でも、そんなこといいの。だって「今は」だから。
だって頑張れば分からないじゃない?これからも挨拶は続けて、馴らしていって、果ては仲良くなって、告白。
そりゃ、まあ、長年挨拶して慣れる気配がないってのは誤算だけど、今からでも可能性は零じゃないし。
むしろ「あれ?こいつ、昔はちょっと怖かったけど、なんか女らしくなってないか・・・」っての狙ってるし。
うん、むしろ私有利だし。あ〜、やる気出てきた。
「現実見なさいよ・・・」
遠くに行きそうな私の考えを友達が引き戻す。
「尾浜勘右衛門が一緒にいる人たちは五年生の中じゃ人気があります。
当然の如く、尾浜もあの優しい容姿と雰囲気から女子からそれなりの支持を受けています」
そう、群がる女は私だけではない。この年の女子は色恋に目ざとい。
さらに、学園内という限られた範囲となれば、相手は限られてくるわけで。好きな人が被るなんて全く珍しい話ではないのだ。
「加えて、その人気者5人が唯一傍にいることを許している女子が、我がくの一教室が誇る才女、。
しかも5人はに悪くない感情を抱いていることは明白である」
思い出す女子の顔。白い肌、大きな瞳、色の良い唇、上がった口角、輝く髪の毛、締まったお腹、すらりと伸びた足。
いったいそれ、どこから手に入れてきたのよ、と問いたくなる完璧な体型。
「さ、あんたはどこに可能性を見出したって言うの?」
「・・・ゆ、が勘右衛門を選ばないかもしれないじゃない」
他に4人素敵な男子がいるのだ。勘右衛門が選ばれる可能性は5分の1。あれ、意外と可能性高い。
「フラれるまで待つって言うの?」
「・・・ああ、もう、知らないわよ!!とにかく攻めるのみよ、攻撃あるのみ!!」
あまりに友人が私に現実を見せようとするので私は嫌になった。
絶望的なのなんてわかってるもの。でもね、それひっくり返してでも彼女の座射止めてみせるってもんでしょ。
それが女ってもんでしょ。
「そのあんたの押せ押せ攻撃が今の状態作ってるっての」
呆れたように言い棄てられた。
仕方ないじゃない、他に方法なんて知らない。
私には完璧な容姿も、綺麗な体も、知識豊富な頭も、一番に走り抜ける運動神経もない。
私にできるのは、できるだけ彼の眼に入っていられるように、鬱陶しく付きまとうだけなんだから。
ああ、言ってたら本当に憎くなってきた。
本当、あの体どこに売ってんのよ・・・。
もどる
次