ドリーム小説





今日は食事当番で、五人とは一緒に食事が取れなかった。

でもおばちゃんと色々話しながら食べる昼食は美味しかった。

だから気分良く歩いていたのに、それをぶち壊す出来事は簡単に起こってしまう。

〜、ちょっと話さない?」

食堂を出てすぐの所で待ち構えていたのは同級生三人。

ため息を吐きそうになる。猫なで声が気持ち悪い。

「嫌」

この三人は何度もこうして私とお話をしに来る。

代わり映えのしない内容には飽き飽きだ。

「そう言わないでよ。私たちは話があるの」

ニッコリと笑う顔だが、目が笑っていない。

怒っていて、イラついていて、私に少し怯えている目。

「ね、ちょっと、そこの裏で。良いでしょ?」

こういう輩は拒否すればここで喚きはじめる。それは遠慮したい。

五人の誰かに見つかったら、ひどく心配されるから。

私は大人しく、食堂近くの建物の裏に足を進めた。










着いて早々に、私は壁際に追い込まれる。

三人に前から取り囲まれ、威圧される。

〜、私ね、鉢屋君が好きなの」

知っている。実習で男子と関わるようなものがあれば、真っ先に三郎に向かっていくから。

そして全く三郎に相手をされていないのも知っている。三郎はあまり他人に関心を示さない。

「でも、鉢屋君、が一緒にいると、に気を使うみたいでさ」

すごい節穴。自分が相手にされないことを私のせいにするのは責任転嫁。

「だから、ちょっと距離を置いてくれたらいいの」

ね?と笑って言うが、あくまで態度は威圧的である。頼んでいる様子ではない。

人を見下してるんじゃないわよ。

「うちらも話しかけづらいのよ」

私の目はひどく冷めていたと思う。

自然と口が開いた。

「どうして私がわざわざそんなことしなきゃいけないの。別に私がいても話しかければいいでしょ。私は話しかけるななんて言ってないわよ」

そうでしょ?私言ってないもの。いつ私が、三郎に気を使わせることをしたの?

どうして、私が見下されてるの?

なんで私がこんなこと言われなきゃいけないの。

「あんたのそういう澄ました態度が気に食わないのよ!!」

相手が興奮し始めた。ここからはまともな話し合いは望めない。

ひどく稚拙な罵詈雑言を向けてくるだけだ。

「あんたがたらし込んでなきゃ、私だって!!」

相手にされてた?

「ちょっと」

その場には似合わない落ち着いた声が聞こえた。

私を取り囲む三人の向こう側に人がいた。

驚いた。いたことにも気付かなかったが、声をかけてくるなんて。


どうして、ちゃんが。

最悪な考えが浮かぶ。

どうか、仲間だと言わないで。

、邪魔しないで」

いらいらした声がそれを告げる。


よかった、ちゃんは仲間じゃない。

それだけで私はひどく安心した。

ちゃんは呆れたようにため息を吐く。

三人を見据えて、予想外の言葉を言った。

「ここ、くの一の敷地じゃないよ。あんたら声でかいから、他の人に見つかったら面倒なのはあんたら。もし、先生やあんたらの好きな人、もしくは忍たま六年だったらどうするの?言い訳効かないんじゃない?」

三人が息をのむのが分かる。

意外だった。ちゃんは、自分の意思を持っているが、それを押しつけようとせず、人の考えに干渉しようとしなかったから。彼女が人に口を出さない代わりに、人も彼女の行動に口を出さない。

今まではそうだったのに、明らかに今、違う行動が起きている。

ちゃんは優しく微笑んだ。

「これは見なかったことにするから、部屋に帰って落ち着いた方が良い。大丈夫、私以外は誰も見ていない」

ちゃんの言葉に三人はうろたえた。そしてお互いの顔を見合わせると頷いた。

「悪かったわ、。あんたの言うとおり、部屋に帰る」

「それがいい。あんた疲れてそうだから、ゆっくり休んで」

三人ともちゃんの横を通り過ぎて帰って行く。

私とちゃんだけが残り、ピリピリとした空気は去って行った。

ちゃんが私に向かい合う。

「あのさ、。気丈なのは良いし、あんたの個性かもしれないけど、時と場合を考えなよ。喧嘩売り返してどうすんの?笑顔でなあなあにすることだって出来るのよ?」

私の性格をこうやって指摘されたのは初めてだ。

確かに私の態度は最初から喧嘩腰だったかもしれない。

自分のことを見てもらえている、それだけで胸がギュッと熱くなって、それが顔にまで込み上げてきた。

助けてくれる人がいる。

、あんたも部屋に戻って、少し」

ちゃんの目が見開いた。

それで頬がこそばゆいことに気づいて、自分が泣いていたことを知った。

私を助けてくれた人がいる。

「ちょ、何泣いてんの?」

それだけで、私は簡単に弱くなった。五人の前では同等でありたいと思う気持ちが強いのか、こんなに泣いたりしないと言うのに。

ああ、私はきっと、ちゃんに憧れているんだ。

胸から止めどなく思いが零れてきた。涙で目がうるんで前がぼやけている。

「私、何かしたのかな?」

どうして涙が止まらないの?

「私、何か悪いことした?」

どうしてこんなに苦しいの?

言葉が止まらないのはきっと、ちゃんがそこにいる安心感だ。

「私の何がいけないの?」

もしも原因があるのなら、教えて。

私は自分で思っていた以上に、弱っていたんだ。





!!」

叫ばれた声にドキリとする。

ちゃんの声じゃない。

後ろを振りむき、勘右衛門の姿がそこにあるのを確認した。

すごく、大きな声だった。

勘右衛門がそんな声を出すなんて。

そんなことに呆けて、頭の思考回路が一瞬停止した。

勘右衛門の顔が怖い。









私の今の状況は・・・?







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